競走馬が引退した後、どんな人生(馬生?)を歩むのか――。
普段は予想の世界にいますが、たまには“その後”にも目を向けてみたいと思います。
今回は、引退競走馬支援の中でも制度や体制の整備を進めている新しい団体、
一般財団法人Thoroughbred Aftercare and Welfare(通称:TAW)について、情報を整理しておきます。
一般財団法人Thoroughbred Aftercare and Welfareとは?
Thoroughbred Aftercare and Welfare(略称:TAW)は、
競走馬としての役目を終えたサラブレッドたちの「その後」を支えるために、2024年に設立された一般財団法人です。
引退後の進路や生活環境を整えることを目的に、セカンドキャリアの形成や養老・余生の機会の拡充、さらには馬の福祉(アニマルウェルフェア)の向上など、幅広い分野に取り組んでいます。
この団体の設立には、2017年から活動している「引退競走馬に関する検討委員会」の存在が大きく関わっています。
農林水産省、JRA、地方競馬主催者、生産者団体などが連携し、
引退馬を取り巻く状況改善の必要性が共有された結果、業界を横断する専門組織としてのTAW設立に至った流れです。
TAWの最大の特徴は、引退馬の直接的な保護やファン参加型の支援を行うのではなく、制度設計・受け入れ体制の整備・業界全体の調整役といった、裏方としての役割に特化している点です。
また、栃木県宇都宮市に設けられた「一時受入れ施設」では、引退馬が次の進路に進む前の短期間の休養や初期調整(リトレーニング)なども行われており、現場レベルでの支援体制も少しずつ形になっています。
TAWの主な取り組み
TAWは、引退競走馬の福祉向上と利活用を支えるため、主に以下のような事業を展開しています。
- セカンドキャリアの支援
乗用馬への転用など、引退競走馬の新たな活躍の場を広げる取り組み。 - 養老・余生の環境整備
競走馬としての役目を終えた馬たちが安心して過ごせる場所づくり。 - 一時受入れ施設の運営
栃木県宇都宮市の施設で、次の移籍先が決まるまでの間に馬を一時的に受け入れ。体調確認やリトレーニングも行う。 - アニマルウェルフェアの普及と制度対応
馬の福祉に関する意識を広め、関連する法制度への対応も視野に入れて活動。 - 馬文化・乗馬の振興、人材育成
馬との関わりを日常に取り入れるための文化的・教育的支援。
一見すると多岐に渡っているようですが、どれも「引退競走馬が社会の中で存在し続けるための仕組みづくり」に関連していると感じます。
他団体との違いは?何が“新しい”のか
引退馬支援には、さまざまなアプローチがあります。
TCC Japanのようにファンクラブ制度で馬を支える団体や、引退馬協会のように寄付やグッズで活動資金を募る団体もあります。
それに対し、TAWは表に出ることよりも“制度そのもの”を支える立ち位置。
舞台の裏で機材を動かすような、そんな役割です。
たとえば、
- 引退馬の受け入れ先との調整
- 養老施設や乗馬クラブへの情報提供
- 活動奨励金制度を通じた民間団体への支援
- 公的機関との調整や法制度への対応
といった取り組みを通じて、支援が継続的・効果的に行われるための“仕組みづくり”を担っているのが特徴です。
また、JRAや農林水産省などが関わる「引退競走馬に関する検討委員会」の流れを受けて設立された背景からも、業界全体を調整・支える中核的な役割が期待されている団体であることがわかります。
現場で活動する民間団体と、土台を整えるTAW。
両者の存在が補い合うことで、日本における引退馬支援の体制はより強固なものとなっていくでしょう。
私たちファンとの距離感
「支援したいけど、どう関わればいいのか分からない」
そう思われる方もいるかもしれません。
確かにTAWには、今のところ、寄付やファンクラブのような個人向けの参加制度は設けられていません。
しかし、TAWのような団体の存在を「知ること」「広めること」は、それ自体が大切な支援の一歩です。
このブログの本筋は「競馬を楽しむこと」ですが、
その楽しさの背景にある“馬のその後”にも目を向けてみると、
競馬というスポーツがより立体的に見えてくるように感じます。
おわりに|競馬の外側にある“静かな支援”
競馬の楽しみ方は人それぞれですが、馬に関心を持つなら、レース後の“その後”もまた無関係ではないはずです。
引退した競走馬が、新たな役割を得たり、穏やかに余生を送るためには、多くの支援や仕組みが必要です。
そして、その支援を土台から整えているのが、TAWのような団体です。
派手な活動ではありませんが、民間団体だけでは手の届きにくい制度的な部分、業界間の調整、継続的な枠組みの整備といった「静かな支援」がなければ、引退馬の未来は不安定なままです。
私たちファンにできることは限られていますが、
このような取り組みの存在を知り、考えの一部として持っておくことは、競馬を楽しむ者として十分に意味がある行動だと考えています。
👉 TAW公式サイト:https://www.taw.or.jp